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私たちが考えるお米のこと 第2回

米販売を考える  シニア会 市川 稔

いよいよ米販売も稲作生産も戦国時代に突入してきましたね。
食管法に守られ、免許制度に守られ、販売業界も皆で仲良く、組合主導で行政と密にしていれば良かった。作る方も、減反に協力していれば価格は下がったとはいえ、買い取ってくれました。
食糧法も改正され、平成十五年産米から新たな仕組みに変わって行きます。
新しい制度では、生産者も集荷業者も、あるいは米卸や小売という区別は無くなり、年間二十トン以上の取扱を見込むところは一律に農林水産大臣への届出のみになります。
これは、不測の事態のために業者名を把握しておく程度のものでしょう。
米は米屋で買うものという常識は過去のことになりました。
いろいろな調査の結果を見ても、米屋から購入している世帯の割合はたったの十パーセント程度になってしまいました。
一番は農家から直接購入するというものです。特に生産消費混在地帯はその傾向が顕著に現れています。買っていない、タダでもらっている人を含めると半分近くになります。その次が量販店やスーパーになります。約四分の一程度でしょうか。
米販売といっても、大型精米工場を有する米問屋と小売店ではやり方がまったく異なります。
変えなければダメということだと思います。
米卸も米小売店への卸売業務は取扱量からみたら微々たる数字になってしまいました。
大手は量販店やスーパーと取引できるかどうかが重要なカギになってしまったのです。同様に、大手外食企業や中食企業、あるいはコンビ二の指定業者になれるかどうかも重要なポイントになりました。
大型精米工場では無洗米の設備も必要不可欠になってきました。
ここで、無洗米の今後について独断ですが、私見を述べたいと思います。
無洗米の基準は濁度にするそうです。機械メーカーも大体出揃いましたし、大型精米工場は導入が進みました。これから中堅工場が導入するかどうかでしょうか。
大手米卸は品揃えの一つとして不可欠な商材でしょう。無洗米の生産販売の数字も伸びていますから、ある一定のシェアまで行くでしょう。
ここで、買う側から眺めてみましょう。
米の消費が年々落ちてきた原因の一つに「炊くのに時間がかかる」ということが挙げられると思います。それでも、日本の家庭は諸外国に比べて家庭で料理することは多いほうだそうです。米を研ぐ(洗う)浸漬する、炊飯、むらしまで一時間以上掛かってしまうからです。無洗米は洗う手間が省けることが「売り」ですが、業務用では水の使用やスペースの問題、あるいは作業の合理化という観点もありますね。
これは、これで良いのですが、心配していることがあります。
皆さんご承知のことだと思いますが、無洗米にするには、通常精米も重要なポイントになります。
それは、精米が甘いと無洗化処理の機械にかけても、ヌカ成分が残っていて、無洗米にはなりにくいからです。濁度を下げるためには、精米をきつくする、いわゆる過搗精の状態にしてあげなければならないからです。
米の食味は大変微妙なところで、おいしい、おいしくないと判断します。
無洗米の食味というのは、その微妙なヌカ成分のおいしさが無くなってしまうのです。
味のない、まっ白なご飯がおいしいご飯というように嗜好が変化してゆく可能性も大ですね。
日本米の良さを剥いでしまう感じを筆者は持っています。
これも時代の流れですから、量販店や一部の業務用での流通は増えてゆくと予測できます・・・。
一方でシェアは少なくなったとはいえ、米専門店では米屋として、本当においしい米を販売してもらいたいものです。
それには、精米工程も重要な役割があります。
通常の玄米を白米にするには、精米歩留九十が一つの目安ですが、筆者は現在の白米は搗き過ぎではないかと危惧しています。
今では循環式の精米機はほとんど姿を消してしまいました。
三十年近く前になりますが、筆者はモーリーMG7という循環式の精米機を使っていたことがあります。五十馬力のモーターで循環させるのですから迫力あります。分銅の掛け方やヌカを切るタイミングなど、熟練工の世界でありました。ヌカと一緒に少しずつ精米して行きますので、精米の工程が手にとるように解ります。
又、生産地でもコイン精米機大繁盛ですが、こだわる農家は昔ながらの循環式の精米機を好んで使っています。
白米の見た目が黄色い(飴色)ことや白度計の数値が上がらないということ。あるいは最後のヌカ切れが悪いために米糠が酸化し、日数が経つと食味が落ちるということがあったと思われます。
米専門店は精米にもう一度こだわる必要があるのではと強く思うのです。
ご飯のうまみは「ヌカ分」にあると言ったら言いすぎでしょうか?
歩留で言えば九十一から九十二くらいで仕上げ、表面の付着ヌカを綺麗にしてあげれば、炊いておいしいご飯になります。
日本は急げ急げで来ましたが、高齢化社会を迎え、ゆっくり、ゆっくり、スロー、スローが逆の意味で時代に合っています。
人間だって広い意味で云えば「飯を食う」ために生きているようなものですから・・・・・。
同じ人間が、時には五分で食事を済ませ、時には三時間かけて楽しむ。
定年からの残りの人生をいかに楽しむかということになれば、ゆっくりと食事を楽しむということも重要なことであろうとおもうのです。
米専門店は精米方法も色々提案し、真っ白いご飯だけが、おいしいご飯ではありませんよと、お客様とコミュニケーションをとることなどが重要です。
そういう意味では、あらかじめ袋詰された米では、そうは出来ませんし、お金とモノとの交換作業になってしまいますから、専門店で対面販売の意味がなくなってしまいます。
ご飯食を中心とした日本型食生活の良さを再認識できるように提案してゆくことがすごく大切なことだと思うのです。
又、日本食の優れたところは、発酵食品が多いことです。
漬物、味噌、醤油、酢など、これら発酵食品が健康に良いことは再認識されてきました。
米を中心とした食生活提案として、電気炊飯器の果たした役割は総理大臣賞ものですね。今ではIH方式もあり、炊飯ジャーとして、おひつの代わりにもなりました。
そんな時代だからこそ、ガス直火で簡単に炊ける「土鍋」を提案し、小さな「おひつ」も提案。
精米を甘くした米を、しっかりと研いで「ご飯用土鍋」で炊く。
ガスなら簡単に「火加減」できるし、お年寄りがいれば、ご飯を柔らかくするために「水加減」を多くしてあげる思いやりが家族の暖かさを作るのでしょう。
日本の「火加減」や「水加減」
よい加減を大事にしたいものです。

シニア会  市川 稔
minoru-ichikawa@irb.co.jp

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